異世界高校生 第1話

異世界タシェニュヴルア ノルニアノス王国/パルドヌス神殿

  • 若き優秀な女魔導士であるアンリエッタ・ドゥ・ビュリは、パルドヌス神殿にある自身の時空魔法研究室で今日も実験に明け暮れていた。
  • 時空魔法陣を使い、未知の異世界に精霊を飛ばす実験(地球で言うところの、宇宙を観測するために人工衛星を飛ばすような感覚に近い)をしている最中、突然地震が発生して、魔法陣が壊れ術式に狂いが生じてしまう。

地球 日本/東京 古鞍台高校通学路沿いにある喫茶店

  • 東京都立古鞍台高等学校に通う、高校2年生の颯希陽斗と箕原優羽は下校途中に立ち寄った喫茶店で、親友の榎南多栞から相談を受けていた。どうやら栞の彼氏である西依櫂馬と何かあったようだ。
  • 栞によると、最近櫂馬との付き合いが悪いらしい。

「ねえ、今度の日曜試合ないんでしょ? 久々に遊びに行こうよ!」

「わりぃ、その日も練習」

「ええ!? 最近練習ばっかじゃん!」

「ごめんな、大会も近いしさ」

「それは分かるけど・・・」

「俺、今、サッカーに命賭けてっから!」

「ハァ・・・?」

 

  • 上記のようなやり取りが、栞と櫂馬の間にあったとのこと。栞は「アタシよりサッカーの方が大事かっつの!」と愚痴を垂れつつ、熱心にサッカーの練習に取り組む櫂馬の姿に改めて惚れ込んでしまっているという複雑な乙女の心境にある模様。
  • 陽斗と優羽は「またいつもの愚痴か」と思いつつも、友人として真摯に栞の悩みを聞いてあげる。
  • 自分の不満を聞いてもらい胸がスーッと晴れた栞は、真摯に聞いてくれた陽斗と優羽に感謝する。
  • 喫茶店を出て、3人一緒に下校していた途中、突然陽斗と優羽の足元に光る円形の魔法陣が現れ、2人の姿は消えてしまう。一人取り残された栞は、ただただ混乱するばかり。

異世界タシェニュヴルア ノルニアノス王国/アシュヴィテミス平原

  • 突然異世界タシェニュヴルアへと召喚され、アシュヴィテミス平原のど真ん中に放り出されてしまった陽斗と優羽。ここがどこか分からず、携帯電話(スマホ)も通じない。
  • 上空を巨大なドラゴンが飛行して通過するのを目撃した陽斗と優羽は、最初は映画の撮影か何かかと無理に納得しようとするも、やがて冷静になりここが異世界だと理解せざるを得なくなる。
  • そんな陽斗と優羽は、凶悪な盗賊団に遭遇してしまう。盗賊にボコボコにされ押さえつけられた陽斗の目の前で、優羽はあわやレイプされる寸前という絶望的な状況に。
  • 間一髪でアンリエッタが駆けつけ盗賊団を撃退し、2人を救出する。
  • 最初は互いに言葉が通じなかったが、アンリエッタは翻訳魔法を使い意思疎通が可能に(陽斗と優羽には、アンリエッタが日本語をしゃべっているように聞こえる。ちなみに翻訳魔法の効果によって、陽斗と優羽はタシェニュヴルアの文字も読めるようになっている)。
  • アンリエッタは陽斗と優羽に、2人が魔導実験中の想定外の事故でこの世界に召喚されてしまったという経緯を説明して謝罪する。
  • 異世界に召喚されたと聞き「もう地球には帰れないのか?」と不安になる陽斗と優羽だが、アンリエッタによれば、地震でヒビが入った時空魔法陣の修繕が済めば、すぐにでも2人を元の世界へと帰還させることができるとのこと。
  • ただし魔法陣の修繕には最低一か月の時が必要。「そんな長い間自分たちが行方不明になっていては、家族や友人たちが心配する」と主張する優羽に、アンリエッタは陽斗と優羽を地球に帰還させる際に「多少時間を操作して、2人が地球からいなくなった瞬間の誤差数分間の時点に時間を巻き戻して送り返すくらいなら造作もない」と説明。
  • 後顧の憂いがなくなった陽斗と優羽は、それならばと開き直って異世界ライフを満喫する貴重な機会を思う存分楽しむことにするのだった。